第三回:モチベーションをチューニング【理学療法士|ジャパハリネットギタリスト 中田衛樹先生】

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—前回の続き

先生と呼ばれる立場“だから”

- 話が少々前後しますが、先ほどギターによる症例改善の発表を日本行動分析学会で行われたとのことなのですが、行動分析を臨床に取り入れたきっかけはなんだったのですか?

 

中田先生:私が一年目の頃です。ここの病院では、1年目にスーパーバイザーがつきます。その方が、行動分析を臨床に取り入れていました。ある日、自分が担当する脳血管疾患の患者さんで寝返りの練習をしていたのですが、全然できなかったんです。

 

手順を覚えられないのです。それでバイザーの先輩に相談したら、「この通りにやってごらん」とその方が書いた論文(岡田一馬・他:逆方向連鎖化の技法を用いた起居動作練習の効果‐認知症を合併した重度片麻痺者における検討.行動リハビリテーション2014;3:37-42)を渡されました。

 

そこに書かれている通りにやったら、1回目の介入でできたんです。具体的な方法ですが、逆方向連鎖化っていう方法なんですけど、寝返りは普通背臥位からはじめて側臥位になるまでですよね。

 

ですが、それを逆方向から学習していきます。側臥位の状態からクッションを利用して、30°戻した半側臥位から寝返りを行います。次にそれがクリアできたら、60°戻した半側臥位で同じように寝返りを行います。そして、最終的に背臥位の状態から寝返りを行うという方法です。

 

- この方法は先ほどのお話に出ていたギターの例も行動分析を利用しているのですか?

中田先生:そうですね。先ほどは、順調に上達したようにお話をしてしまいましたが、色々とうまくいかないことがありました。まず、コードを覚えられません。「練習するように」と課題を渡しても、手つきを見たらわかるんですよね。明らかに練習していないんです。

 

練習していれば、すぐにわかります。手つきもそうですし、醸し出す雰囲気とかもギターを触っていれば変わってくるんです。そこで、行動分析学的に介入しようと試みました。

 

まず、やる気がないのであれば、モチベーションが上がるよう視覚的に上達度や達成度をわかるようにしようと。例えば、簡単なコードの循環「GDE-」を、同じ小節弾かせて、出来たら何点というように、得点化するようにしたんです。

 

「今日は何点だった」と、すぐに点数化してあげて、それを毎回グラフに起こします。ただ、その中でも習得が難しいコードも沢山あります。よく言われるのが「F」のコードです。べタッと抑える、これがやはり1番難しくて、彼の場合は少し手に麻痺があったんです。

 

どうしても慣れない動きになると、力が入ってきて筋緊張が高まって、上手く抑えられなくなります。そこは、チューニングを変えて簡単なコードでおさえられるようにして、難易度を変えながらクリアしていきました。

 

それを続けていくと、自宅でも積極的に練習するようになっていったんですよ。そうすれば当然、毎回のリハの時間の得点も高くなっていきます。モチベーションも徐々に上がってきて、生活態度も変化してきたという声も聞こえはじめました。

 

今まで彼は結構否定的な発言多かったようなのですが、自分から「アルバイトがしたい」など色々言うようになってきて、性格まで変わってきたようです。

 

- なんだか、中田先生に似ていますねその方。以前、論文で70%以上だったか80%以上だったかは忘れましたが、ほとんどの患者さんは教えられた自主練をやらないという論文を見たことがあります。

中田先生:それ自分も読んだことあるような気がします。セルフエクササイズをやらないのは、患者さんのせいではなく理学療法士の責任なんです。「なぜやらないのか?」という問いを考える前に諦めてしまう人が多いように感じています。

 

「やらない人が悪い」確かにそうかもしれませんが、やれる状態、環境設定をこちら側が正しく設定してあげることも、理学療法士の役目ですね。ただ私も、行動分析学に出会う前はそうだったと思います。

 

行動分析学を学んでいくうちに、『できない』のは患者さんが悪いのではなくて、「理学療法士が悪いんだ」と考えられるようになりました。元々、このような学問は子供に対する治療からはじまったようです。それを、リハに応用したのが、行動リハビリテーションというようです。

 

でも今のリハは、こちらが主体ですよね。先生と呼ばれる立場ですから、そこには気づきにくいのかもしれません。

 

—続く。

 

【目次】

第一回:デビュー・解散・理学療法士

第二回:ギターリハビリテーション

第三回:モチベーションをチューニング

最終回:僕は理学療法士です。

 

中田先生のプロフィール

理学療法士

ジャパハリネットギタリスト

<研究発表実績>

・  逆方向連鎖化を用いた起居動作練習効果の検討 第19回愛媛県理学療法士会学術集会

・   逆方向連鎖と部分練習を用いた起居動作練習効果の検討 行動リハビリテーション研究会 第4回年次大会

・   脳卒中発症後に当院に入院した65歳男性の退院までの経過報告 愛媛脳卒中シームレス研究会 第18回中予地区作業部会

・   逆方向連鎖化と部分強化の技法を用いた起居動作練習効果の検討 第44回四国理学療法士学術大会

・   維持期の高次脳機能障害患者に対して、行動分析学的介入により行動変化を認めた一例 第3回慢性期リハビリテーション学会

・   高次脳機能障害を呈した症例に対するギター演奏練習 行動リハビリテーション研究会 第5回年次大会

・  回復期脳血管障害者の重症度とADLの関連 第47回四国理学療法士学術大会

・  回復期脳血管障害片麻痺者の端座位自立度の検討‐麻痺重症度と年齢および認知症が及ぼす影響‐ 行動リハビリテーション研究会 第8回年次大会

<論文投稿実績>

・  重症片麻痺者に対する逆方向連鎖化を用いた起き上がり,寝返り練習の効果.高知リハビリテーション学院紀要2014;16:13-16

・  逆方向連鎖化と部分練習の技法を用いた起き上がり動作練習‐高次脳機能障害とパーキンソン症候群を合併した脳血管障害患者に対して‐.高知リハビリテーション学院紀要2017;18:27-32

・  高次脳機能障害を呈した症例に対するギター演奏練習‐応用行動分析学的介入により行動変化を認めた一例‐.行動リハビリテーション2017;6:18-22

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