みなさん、こんにちは!
秋田県でeスポーツについて実践・研究・普及を行なっている作業療法士の若狭利伸(わかさとしのぶ)です。
前回の記事では、eスポーツの実践におけるコミュニケーションについて紹介しました。
今回で「eスポーツを語る」の連載も第四回!
第四回は、今までの記事とガラッと内容を変え、私が注目している「ブラインドeスポーツ」について、ブラインドeスポーツの普及や提唱活動をされているブラインドeスポーツ代表、N高等学校3年の櫻井竹琉さんにインタビューをさせていただきました。
ブラインドeスポーツとは?
ー櫻井さん、本日はよろしくお願いいたします。
櫻井さん よろしくお願いいたします。
ーまず始めに「ブラインドeスポーツ」とはどのようなものなのでしょうか?
櫻井さん ブラインドeスポーツは、視覚障がい者やアイマスク等を装着して目が見えない状態の”プレイヤー”と目が見える”ガイド”がペアになってプレイするeスポーツの新しいスタイルです。
ー(改めて聴くとすごい…!斬新だ…!)今現在、どんなタイトルでプレイされているのですか?
櫻井さん 現在は、サッカーゲームの「ウイニングイレブン」や野球ゲームの「実況パワフルプロ野球」などをプレイしています。
ブラインドeスポーツのプレイ風景。プレイヤーとガイドの細かいコミュニケーションが求められる。(櫻井さん提供)
ブラインドeスポーツが大事にしていること
ーそんなブラインドeスポーツですが、櫻井さんが大事にしていることは?
櫻井さん 私は社会に対して「相互理解」を浸透させ、それを当たり前にしたいと思っているんです。そのためにブラインドeスポーツを「コミュニケーションの重要性」が楽しみながら感じることができるコンテンツにしようと活動中です。
ーなるほど。「相互理解」とは?
櫻井さん 例えば、既存の障がい者理解のように障がいのある方に対して「こういう特徴がある人もいる」という健常者の一方的な理解だけではなく、お互いに双方向から歩み寄ることです。相互理解を意識することによって、一方的な理解では生じやすい誤解や偏見を減らしていくことができると考えています。
ーそれはeスポーツに限らず大事なことですね。私たちも働いていて、その方にとって必要な支援と必要以上の支援ってどうしても混在してしまう場面があると思います。その辺りの理解にも結び付いていきそうです。
ーでは「コミュニケーションの重要性」とは?
櫻井さん 前提として相互理解にはコミュニケーションが必要不可欠であると考えています。ブラインドeスポーツではその上で、例えば同じ視覚障がいの方でも人によって見え方が異なるため、その方とどのようなコミュニケーションを取ればいいプレイに結びつくのか、お互いに考えながら行ないます。ブラインドeスポーツはプレイヤーがただプレイするだけではなく、そしてガイドがただ指示するだけでなく、結果的に人と人のコミュニケーションを養うことにも繋がっていくと思うんです。
ーいやぁ…深いですね…!(私が高校生の時はここまで考えていなかった…!すごい…!)
ウイニングイレブンでは時計の針の位置を表すクロックポジションで相手に位置を伝えることも。(櫻井さん提供)
ブラインドeスポーツの「楽しさ」
ーでは続いてブラインドeスポーツの「楽しさ」についてお伺いいたします。私自身も現在、施設でeスポーツを行なっていますが「楽しさ」ってもの凄く大事なことだと考えています。これはeスポーツに限らずですが、「楽しさ」が人を動かすこともあると思うんです。ブラインドeスポーツが持つ「楽しさ」はどんなところにあると思いますか?
櫻井さん 例えばウイニングイレブンだと、お互いのコミュニケーションが上手くいくと点数が入ります。自分が相手に伝えたことが上手くいき、点数に繋がることが楽しさだと思います。見えていない人に見えている人が伝えて、お互いのイメージが合致してゴールできた時は楽しさが増しますね。
ー確かに…!普通にウイニングイレブンで点数入れた時ももちろん嬉しいですし、楽しいですが、これが他の方から声を掛けてもらって点数が決まったとなると、絶対に立ち上がって喜んでしまいそうです。
櫻井さん はい。元々このブラインドeスポーツはコミュニケーションをするために作ったものなので、「ブラインドeスポーツが楽しいのではなく、人とのコミュニケーションが楽しい」という方が本質に近いのかもしれません。
ーなるほど。まさにそのコミュニケーションが人を動かしている気がします。そうなると視覚障がいのある方に限らず、色んな方に楽しんでいただけそうですよね。アイスブレーキングとかに用いたら面白そうです。
櫻井さん そうなんです。視覚障がいのある方に限らず、目隠しをしてプレイすればどんな方でも楽しめます。お互いの双方向のやり取りに魅力があるんです。
ー話を聴いていくうちに私も実際にプレイしたくなってきました…!
ブラインドeスポーツの可能性
ー今後、医療・福祉の現場でブラインドeスポーツが活用されてもおかしくないと私は考えているのですが、どんな効果を期待していますか?
櫻井さん そうですね。1人1人を見ていくという視点が増えて、括りが無くなっていくことを期待します。その括りというのは「障がい者」とか「高齢者」とかそういうもので。「片麻痺の○○さん」「ご高齢の○○さん」という表現ではなく、単に○○さんには片麻痺の症状があり、○○さんはご高齢ということで。そもそも1人1人がそれぞれ違う人間なので。
ー私もその辺りは違和感を持っていました。そこを変えてしまう可能性を秘めているのは魅力的です。
櫻井さん 「私は~ができるけど、○○ができない」という方が居たとすれば、その人に合ったサポートや支援をコミュニケーションを重ねる中で見つけていく。そうするとバリアフリーの形も変わってくる気がします。そして必要のないバリアフリーも見えてくるはずです。望んでいる支援を望むだけ行なうことと言いますか。
ー実は作業療法士もこの辺りの考え方が大事なんですよね。型にはめるのではなく、その人に合わせたリハビリを進めていく。櫻井さんと話をしていて、私自身もそれを再確認できたような気がします。
ーでは、最後に櫻井さんから記事を読んでいる方にお伝えしたいことがあればお願いします。
櫻井さん 同じ人間はこの世に1人として存在しないです。だから、現場で働く方も利用者さんも相互に理解していこうと意識することが大事なのかなと感じます。
ー本当におっしゃる通りです…!お互いに歩み寄ることやコミュニケーションを取ることでその視点が養われていくといいなと私も思います。櫻井さん、ありがとうございました!これからもブラインドeスポーツの活動を応援しております!
櫻井さん ありがとうございました!
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