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第2回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション(評価)

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透析患者のリハビリテーション(腎リハ)を支える第一歩は「評価」にあります。本コラムでは、身体機能・身体活動量・QOL・栄養状態の評価法を紹介します。腎リハは、単なる運動療法ではなく、「その人らしく生きる力」を支える包括的支援です。

目次

第一回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション

はじめに

透析患者に対するリハビリテーション(腎リハ)を実践していくうえで、最初に行うべきこと。それが「評価」です。評価は、個々の患者の身体的・精神的特性、リスクや生活状況を可視化し、適切な運動療法や栄養介入、心理社会的支援の選定に直結する重要なプロセスです。また、チーム医療における共通理解の基盤ともなり、患者中心の包括的ケアを実現する出発点でもあります。

腎リハにおける運動療法は、病態、治療状況、身体機能障害の程度を踏まえて処方されるべきものであり、透析患者においては、身体機能や日常生活活動(ADL)の低下を予防・改善するため、継続的かつ個別化された介入が求められます。

とりわけ透析患者における身体機能やADLの低下は、生命予後にも密接に関わるため、疾患の理解を深める意味でも、定期的な身体機能評価と、その結果に基づく運動処方の実践が重要です。今回は、日本腎臓リハビリテーション学会が示す「透析患者に対する身体機能と身体活動量の評価および運動療法・指導のフローチャート」1)も参照しながら、透析患者に対する腎リハの評価実践について整理します。

身体機能の評価

透析患者の身体機能評価は、運動療法を展開するうえで不可欠です。フレイルやサルコペニア、転倒リスクを早期に把握し、運動介入の指標とすることで、安全かつ効果的な支援が可能になります。具体的には以下のような指標が用いられます。

  • 歩行速度

  • SPPB(Short Physical Performance Battery)

  • 筋力(握力・膝伸展筋力)

  • バランス機能(Timed Up and Go、閉脚立位時間など)

  • 運動耐容能(CPX、6分間歩行テスト)

これらはリスク評価だけでなく、運動療法の効果判定や介入計画の立案・修正にも役立ちます。

身体活動量・ADLの評価

身体機能が保持されていても、実際に活動していなければ廃用が進行してしまいます。したがって「どれだけ動いているか」という身体活動量の評価も極めて重要です。

  • 活動量計を用いた歩数・活動時間

  • IPAQ(国際身体活動質問票)

  • Functional Status(基本的ADL5項目と手段的ADL8項目から構成)

これらを用いて、日常の活動レベルやその背景にある行動特性を評価し、行動変容支援と組み合わせることで、生活全体へのアプローチが可能になります。

透析患者に対する身体機能と身体活動量の評価および運動療法・指導のフローチャート

「透析患者の評価と運動指導のフローチャート」では、以下の流れに基づいた実践が推奨されています。

  1. 1.病態が安定していることを確認

  2. 2.歩行速度やSPPBを指標に移動能力を評価

  3. 3.移動能力が低ければ、詳細な身体機能評価(筋力・バランス・耐久性など)を実施し、個別プログラム(監視型運動)を設計

  4. 4.移動能力が保持されていても、活動量評価により生活のリスクを把握し、行動変容支援を組み合わせた指導を行う

この流れを活用することで、オーダーメードな「その人にとっての最適な支援」が展開されやすくなります。

図1:透析患者に対する身体機能と身体活動量の評価および運動療法・指導のフローチャート(日本腎臓リハビリテーション学会. (2018). 腎臓リハビリテーションガイドライン)

QOL(生活の質)の評価

リハビリテーションの最終的なゴールは、患者のQOLを高めることにあります。QOL評価には以下のような質問票が活用されます。

  • KDQOL

  • EQ-5D-5L

  • SF-36

患者自身の感じている健康や幸福の状態を知ることができ、治療満足度や支援内容の妥当性を振り返る手がかりとなります。

栄養状態の評価

透析患者では「PEW(Protein Energy Wasting)」2)のリスクが高く、栄養評価もリハビリテーションの一環として極めて重要です。

  • PEWの診断基準:①生化学検査(アルブミン、コレステロール等)、②体格(BMIなど)、③筋肉量、④食事摂取量の4領域のうち3つ以上に該当

  • GNRI(高齢者栄養リスク指標)

  • SGA(主観的包括的評価法)

  • MNA-SF(高齢者簡易栄養評価尺度)

  • NRI-JH:血清アルブミン、総コレステロール、BMIなど4項目を用い、透析患者の1年後の生命予後を予測。13点満点で、8~10点は中等度リスク、11点以上は高リスクと判定される

図2:Protein Energy Wastingの診断基準(日本腎臓リハビリテーション学会. (2018). 腎臓リハビリテーションガイドライン)

まとめ

透析患者に対する腎臓リハビリテーションにおける評価は、介入そのものと同じくらい重要なプロセスです。ただ単に「できる・できない」を判定するのではなく、患者が「どのように生きたいか」「どこで困っているのか」「どうすれば支えられるか」という視点をもって包括的に捉える必要があります。

透析患者にとって、リハビリテーションは身体機能の回復だけでなく、「その人らしく生きる力」を支える包括的支援です。だからこそ、「評価」から始まる支援は、患者の生活全体を支えるために重要です。

次回は、透析中に実施可能な運動療法の工夫や現場の取り組み事例についてご紹介していきます。

また、透析患者の腎リハを学ぶうえで、日本糖尿病理学療法学会や日本腎臓リハビリテーション学会は非常に有益な情報源です。第11回JSPTDM学術大会では糖尿病のみならず、腎リハに関する演題や取り組み報告も多く発表されます。糖尿病はCKDの原因の1つであり、透析予防のためにも早期からの予防や対策が重要です。

最新の治療法、専門家との交流、他施設での取り組み事例など、学会に参加することでより深い知識を得ることができます。7月7日から演題登録も開始されます!

糖尿病・透析患者の腎臓リハに関わる医療従事者の方は、ぜひ積極的にご参加ください!

なお、2025年の日本糖尿病理学療法学会学術集会は12月開催予定です(詳細は公式ウェブサイトをご確認ください)。 

・日本糖尿病理学療法学会
 開催日:2025年12月20日(土)、12月21日(日)
 URL :https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsptdm11

【目次】

第一回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション

第2回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション(評価)

参考文献

1)日本腎臓リハビリテーション学会. (2018). 腎臓リハビリテーションガイドライン. 南江堂. 

2)Fouque D.et al:A proposed nomenclature and diagnostic criteria for protein-energy wasting in acute and cronic kidney disease.Kidney Int,73(4):391-398,2008

第2回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション(評価)

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