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江原です。
今回は疼痛症状がある疾患群であるエーラスダンロス症候群(EDS)のリハビリテーションについてです。
EDSは体内のコラーゲン、フィブリリン、エラスチンの異常な合成や機能障害が特徴であり、通常、消化器系、循環器系、運動器系に影響を及ぼす疾患です1)。
どのようなリハビリテーションが行われているのでしょうか?関節過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS)を例に進めていきたいと思います。
関節過可動型エーラス・ダンロス症候群の症状
EDSの13番目の亜型である関節窩可動型EDS(hEDS)は、遺伝的マーカーがなく、分子解析で確認できないため、ベイトンスコア(リンク先にDL可のインフォグラフがあります)と呼ばれる9点満点の臨床評価により診断されます2)。
ベイトンスコアは理学療法においては関節弛緩性(joint laxity)の評価と重なるところがあります。ベイトンスコアは関節弛緩性のうち、特に全身性関節過可動性(Generalized Joint Hypermobility)を客観的に定量評価するための特定の検査方法です。
ほとんどのEDS亜型の診断基準には関節過可動性が含まれますが、hEDS患者はより頻回の関節亜脱臼および、または脱臼3)、 障害を伴う筋骨格症状4)、慢性的な四肢および関節痛5) 、偶発的な呼吸困難も呈することがあります。
hEDSは筋骨格系の障害がメインとなりますので、二次的な機能障害も生じやすく生活にも大きく影響しそうです。
hEDSの症状を以下に列挙しました。
・全身の関節過可動性: 関節の可動域が異常に広く、柔軟性が高い。日常的な動作やわずかな外傷でも関節の亜脱臼や脱臼が起こりやすい。
・慢性的な痛み: 関節の不安定性や筋肉、骨格系の問題に起因する慢性的な疼痛を抱えることが多く、日常生活に大きな影響を及ぼす。
・軽度の皮膚過伸展性: 皮膚が柔らかく、軽く引っ張っても伸びやすい。
・易出血性: 軽微な打撲でも皮下出血が起こりやすい。
・自律神経機能障害: 起立性低血圧や頻脈、めまい、慢性疲労、消化器系の問題(便秘や下痢など)が認められることがある。
リハビリテーションの目的
hEDSの症状は多岐にわたるため、これらの症状に対してリハビリテーションは症状のマネジメントに重要な役割を果たしています。
リハビリテーションの主な目的は、表1の様に関節の安定性向上、痛みの軽減、筋力の強化などを行うことで、ADLの維持・改善し、セルフマネジメントを向上させます。