診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」が開催され看護師をはじめ理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など医療従事者に対する処遇改善の方針として具体的な議論が進められています。前回開催で、診療所においてシンプルな方法が検討され、病院に対しては、150種類以上の詳細な診療報酬体系を用いて、施設ごとに必要な賃上げ額を計算し、それに応じた賃上げを行う方針が検討されていました。今回は、診療所や訪問看護ステーションにおいてシンプルな加算によって診療所や訪問看護ステーションによって過不足が生じる問題に対しての補填案が示されました。
診療所
診療所(クリニック)では初診料、再診料、在宅患者訪問診療料に対し、一律の加算が行われます。これは、スタッフの賃上げを実現しつつ、患者および医療機関の事務負担を軽減するための措置です。しかし、この一律の加算により、賃上げに必要な額が十分に補填されない、または過剰になるケースが発生する可能性があります。
特に、透析クリニックや内視鏡クリニックのように初診料や再診料の算定回数が少ないクリニックでは、賃上げに必要な額を満たすことが困難です。これに対応するため、厚生労働省は、賃上げに必要な額を1.2%のベースアップに設定し、この目標に達しないクリニックのために8種類の補填加算を提案しました。これにより、クリニックは自身の状況に応じて適切な補填加算を選択することができます。
訪問看護ステーション
訪問看護管理療養費に780円を加算するという一律の対応を行うことになります。しかし、この一律加算では、賃上げに必要な額を十分に満たせないステーションも出てくる一方で、必要以上の増収を得るステーションも存在します。
この問題を解決するために、訪問看護ステーションに対して、賃上げの目標を「2.3%のベースアップ」から「1.2%のベースアップ」に止めることを提案しています。さらに、1.2%のベースアップを達成できないステーションのために、18種類の救済加算が設定されています。これらの加算は10円から始まり、最大で500円までの範囲で設けられており、各ステーションは自己の状況に応じて最適な加算を選択することができます。
病院の対応方針方針は前回の議論でほぼ固められています。初診料、再診料、在宅患者訪問診療料に対してポイント加算を行います。具体的には、初診料に6点、再診料に2点、在宅患者訪問診療料には、同一建物居住者以外には28点、同一建物居住者には7点の加算を行います。これは、賃上げのための基本的な対応策として設定されています。この基本対応だけでは、2.3%の賃上げを実現するには不足する場合があります。そのため、病院では150種類程度の入院料加算を設けることで、賃上げに必要な額を精緻に補填することを検討しています。これにより、各病院は賃上げと財政のバランスを取ることが可能になります。しかし、150区分の加算でも補填不足になる病院が出てくる可能性が指摘されています。特に大規模病院では、補填不足分が数千万円から数億円に及ぶことも考えられます。このため、中医協(中央社会保険医療協議会)で更なる議論が必要とされています。
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