令和3年度介護報酬改定の主な事項については厚生労働省より具体的な内容の通知がなされ、Q&A等通達が活発となっているところである。
今回は介護老人保健施設に関連した運営に関する基準の一部をまとめていきたい。
【本日の目次】
【運営に関する基準について】
①栄養管理
②口腔衛生の管理
③自立支援促進加算
④科学的介護推進体制加算について
栄養管理
栄養管理について、以下の手順により行うこととする。
イ
入所者の栄養状態を施設入所時に把握し、医師、管理栄養士、歯科医師、看護師、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、入所者ごとの摂食・嚥下機能及び食形態にも配慮した栄養ケア計画を作成すること。栄養ケア計画の作成に当たっては、施設サービス計画との整合性を図ること。なお、栄養ケア計画に相当する内容を施設サービス計画の中に記載する場合は、その記載をもって栄養ケア計画の作成に代えることができるものとすること。ロ
入所者ごとの栄養ケア計画に従い、管理栄養士が栄養管理を行うとともに、入所者の栄養状態を定期的に記録すること。ハ
入所者ごとの栄養ケア計画の進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて当該計画を見直すこと。ニ
栄養ケア・マネジメントの実務等については、「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(令和3年3月16 日老認発0316 第3号、老老発0316 第2号)第4において示しているので、参考とされたい。
なお、当該義務付けの適用に当たっては、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第9号。以下「令和3年改正省令」という。)附則第8条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31 日までの間は、努力義務とされている。
口腔衛生の管理
⑴ 当該施設において、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、当該施設の介護職員に対する口腔衛生の管理に係る技術的助言及び指導を年2回以上行うこと。
⑵ ⑴の技術的助言及び指導に基づき、以下の事項を記載した、入所者の口腔衛生の管理体制に係る計画を作成するとともに、必要に応じて、定期的に当該計画を見直すこと。なお、口腔衛生の管理体制に係る計画に相当する内容を施設サービス計画の中に記載する場合はその記載をもって口腔衛生の管理体制に係る計画の作成に代えることができるものとすること。
イ 助言を行った歯科医師
ロ 歯科医師からの助言の要点
ハ 具体的方策
ニ 当該施設における実施目標
ホ 留意事項・特記事項
⑶ 医療保険において歯科訪問診療料が算定された日に、介護職員に対する口腔清掃等に係る技術的助言及び指導又は⑵の計画に関する技術的助言及び指導を行うにあたっては、歯科訪問診療又は訪問歯科衛生指導の実施時間以外の時間帯に行うこと。
なお、当該義務付けの適用に当たっては、令和3年改正省令附則第9条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている。
自立支援促進加算について
① 自立支援促進加算は、入所者の尊厳の保持及び自立支援に係るケアの質の向上を図るため、多職種共同による、入所者が自立支援の促進を要する要因の分析を踏まえた支援計画の作成(Plan)、当該支援計画に基づく自立支援の促進(Do)、当該支援内容の評価(Check)とその結果を踏まえた当該支援計画の見直し(Action)といったサイクル(以下「PDCA」という。)の構築を通じて、継続的に入所者の尊厳を保持し、自立支援に係る質の管理を行った場合に加算するものである。
② 本加算は、全ての入所者について、必要に応じ、適切な介護が提供されていることを前提としつつ、介護保険制度の理念に基づき、入所者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、特に必要な支援を実施していることを評価するものである。
このため、医師が、定期的に、全ての入所者に対する医学的評価及びリハビリテーション、日々の過ごし方等についてのアセスメントを実施するとともに、医師、看護職員、介護職員、介護支援専門員その他の職種が、医学的評価、アセスメント及び支援実績に基づき、特に自立支援のための対応が必要とされた者について、生活全般において適切な介護を実施するための包括的な支援計画を策定し、個々の入所者や家族の希望に沿った、
尊厳の保持に資する取組や本人を尊重する個別ケア、寝たきり防止に資する取組、自立した生活を支える取組、廃用性機能障害に対する機能回復・重度化防止のための自立支援の取組などの特別な支援を行っている場合に算定できるものである。
なお、本加算は、画一的・集団的な介護又は個別的ではあっても画一的な支援計画による取組を評価するものではないこと、
また、リハビリテーションや機能訓練の実施を評価するものではないことから、個別のリハビリテーションや機能訓練を実施することのみでは、加算の対象とはならないこと。
③ 本加算は、原則として入所者全員を対象として入所者ごとに大臣基準第 71 号の4に掲げる要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員に対して算定できるものであること。
④ 大臣基準第 71 号の4イの自立支援に係る医学的評価は、医師が必要に応じて関連職種と連携し、別紙様式7を用いて、当該時点における自立支援に係る評価に加え、特別な支援を実施することによる入所者の状態の改善可能性等について、実施すること。
⑤ 大臣基準第 71 号の4ロの支援計画は、関係職種が共同し、別紙様式7を用いて、訓練の提供に係る事項(離床・基本動作、ADL動作、日々の過ごし方及び訓練時間等)の全ての項目について作成すること。作成にあたっては、④の医学的評価及び支援実績等に基づき、個々の入所者の特性に配慮しながら個別に作成することとし、画一的な支援計画とならないよう留意すること。
⑥ 当該支援計画の各項目は原則として以下のとおり実施すること。その際、入所者及びその家族の希望も確認し、入所者の尊厳が支援に当たり十分保持されるように留意すること。
a 寝たきりによる廃用性機能障害を防ぐために、離床、座位保持又は立ち上がりを計画的に支援する。
b 食事は、本人の希望に応じ、居室外で、車椅子ではなく普通の椅子を用いる等、施設においても、本人の希望を尊重し、自宅等におけるこれまでの暮らしを維持できるようにする。食事の時間や嗜好等への対応について、画一的ではなく、個人の習慣や希望を尊重する。
c 排せつは、入所者ごとの排せつリズムを考慮しつつ、プライバシーに配慮したトイレを使用することとし、特に多床室においては、ポータブルトイレの使用を前提とした支援計画を策定してはならない。
d 入浴は、特別浴槽ではなく、一般浴槽での入浴とし、回数やケアの方法についても、個人の習慣や希望を尊重すること。
e 生活全般において、入所者本人や家族と相談し、可能な限り自宅での生活と同様の暮らしを続けられるようにする。
f リハビリテーション及び機能訓練の実施については、本加算において評価をするものではないが、④の評価に基づき、必要な場合は、入所者本人や家族の希望も確認して施設サービス計画の見直しを行う。
⑧ 大臣基準第 71 号の4ロにおいて、支援計画に基づいたケアを実施する際には、対象となる入所者又はその家族に説明し、その同意を得ること。
⑨ 大臣基準第 71 号の4ハにおける支援計画の見直しは、支援計画に実施上に当たっての課題(入所者の自立に係る状態の変化、支援の実施時における医学的観点からの留意事項に関する大きな変更、関連職種が共同して取り組むべき事項の見直しの必要性等)に応じ、必要に応じた見直しを行うこと。
その際、PDCAの推進及びケアの向上を図る観点から、LIFEへの提出情報とフィードバック情報を活用すること。
⑩ 大臣基準第第 71 号の4ニの評価結果等の情報の提出については、LIFEを用いて行うこととする。
LIFEへの提出情報、提出頻度等については、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を参照されたい。
提出された情報については、国民の健康の保持増進及びその有する能力の維持向上に資するため、適宜活用されるものである。
科学的介護推進体制加算について
① 科学的介護推進体制加算は、原則として入所者全員を対象として、入所者ごとに大臣基準第 71 号の5に掲げる要件を満たした場合に、当該施設の入所者全員に対して算定できるものであること。
② 大臣基準第 71 号の5イ⑴及びロ⑴の情報の提出については、LIFEを用いて行うこととする。LIFEへの提出情報、提出頻度等については、「科学的介護情報システム(LIFE)関連加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を参照されたい。
③ 施設は、入所者に提供する施設サービスの質を常に向上させていくため、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)のサイクル(PDCAサイクル)により、質の高いサービスを実施する体制を構築するとともに、その更なる向上に努めることが重要であり、具体的には、次のような一連の取組が求められる。したがって、情報を厚生労働省に提出するだけでは、本加算の算定対象とはならない。
イ
入所者の心身の状況等に係る基本的な情報に基づき、適切なサービスを提供するための施設サービス計画を作成する(Plan)。ロ
サービスの提供に当たっては、施設サービス計画に基づいて、入所者の自立支援や重度化防止に資する介護を実施する(Do)。ハ
LIFEへの提出情報及びフィードバック情報等も活用し、多職種が共同して、施設の特性やサービス提供の在り方について検証を行う(Check)。ニ
検証結果に基づき、入所者の施設サービス計画を適切に見直し、施設全体として、サービスの質の更なる向上に努める(Action)。
④ 提出された情報については、国民の健康の保持増進及びその有する能力の維持向上に資するため、適宜活用されるものである。
以上が【介護老人保健施設に係る運営の基準】として通達された内容の一部となる。
自立支援加算等については、要件がかなり細かく、利用者や施設の状況によっては取得が困難なケースも散見されそうな内容となっており、どのように活用できるか?少し先延ばしして考えていく必要のある事案もありそうだ。
介護老人保健施設に関わる運営の中で、尊厳が保たれていない状況がないか?判断が難しい内容も含めて支援の適正化を図っていきたい意図があるのではないだろうか。
LIFEに係る報告の仕組みに関しては各加算と連動する内容が多く、LIFE活用をどのようにしていくか?実務も含めてPDCAを回すべきではないだろうか。
【目次】
第九回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション1)
第十回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション2)
第十二回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション4)
第十三回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション5)
第一七回:令和3年度介護報酬改定Q&A(訪問リハビリテーション)
第二十回:令和3年度介護報酬改定Q&A(介護老人保健施設1)
第二十一回:令和3年度介護報酬改定Q&A(介護老人保健施設2)