こんにちは!月曜日担当の鈴木啓太です。先週は、骨転移のリハビリ前の評価ということで、病的骨折のリスクを評価するところまで解説しました。(前回の記事はこちら)
なかなか評価、確認することが多い!と思った方もいらっしゃるかと思います。しかし、整形疾患・中枢疾患でも同じくらい確認することは多いですよね?使い慣れていない新しい情報は、やはり量として多く感じてしまいますが、活用していくことで身につくかと思います。前回の脊柱転移の評価は、圧迫骨折などの不安定を評価することにも通じており、今回の記事は、実際に介入する際の思考について述べていきたいと思います。
ポイントとして
・疼痛の評価
・運動療法の思考(何を考えて介入しているか?)
この二点が大切です。
ぜひご覧ください。
設定を提示させていただきます。
60歳代、肺がん、脊椎や右大腿骨に転移している方です。
みなさんは、このような方にどのような介入をしますか??
疼痛の評価
介入前に看護記録で、痛みは確認しますが、その痛みが実際にどのような痛みなのか正確に評価します。運動時痛なのか?安静時痛なのか?様々な可能性が、思い浮かぶと思います。
今回は、こちらを紹介いたします。
・OPQRSTを用いることで、どのような痛みか考えられるようになります。がんそのものの痛みなのか?それとも筋の問題なのか?要因によって、負荷をかけるべきなのか?医師による治療が必要なのか?リハビリとしても対応が変わっていきます。
・より具体的に聞くことも大事です。夜に痛みますか?や体重掛けると痛みが強くなりますか?など自分の聞きたい情報(基本動作、ADL)について質問していくとうまく聞き出せ、リハビリに活用できます。
疼痛評価をしてリスクを予測する!
実際に疼痛についてOPQRSTを用いて、評価をしましたがどのように活用すればよいかわからない方もいるかと思います。
・自発痛がある場合、がんの進行、悪化が疑われます。この場合は、がんの治療を優先して行うことがその後のリハビリを円滑に進めるために重要です。痛み止め等の考慮が必要となります。
・日常生活での疼痛は、転移部とのストレスと一致しているかどうか確認します。特に長管骨は、荷重したときに出現することが多いです。
・圧痛や叩打痛は、骨へのストレスを他動的に与えることで生じます。直接的な刺激のため、負担は大きいです。これらの痛みがあった場合は、骨の脆弱性が強いと考えられるのでレントゲンなどの評価も含め、病的骨折のリスクを評価しましょう。
・圧痛は、接触面を大きくしてゆっくりと圧をかける。叩打痛は、患部から離れた部位から行い、どの程度の距離で疼痛が生じてくるのかも評価すると良いでしょう。
動かすときは順番が大切!
では実際に動かしていきますが、すぐさま骨転移している股関節を動かしてしまうと、ボキッと折れてしまうかもしかもしれません。
このように遠位から痛みが出ないか確認しながら、徐々に離床を進めていきます。股関節の運動の負荷量については、つぎに説明いたします。
・下肢圧迫テストは、背臥位で長軸方向に圧をかけ、徒手的に荷重をかけます。下肢圧迫テストは、安静時での模擬的な荷重評価で、そこで疼痛なく可能であれば、動的な
荷重である抵抗運動へと移っていきます。
転移部にかかる負荷を考えよう!!
・膝を立てる動作では、下肢の重量が転移部にかかる負担としては、レバーアームが短いので少ないと考えられます、
・SLRでは、さらにレバーアームが長くなるため、転移部に大きな負担がかかることが想像できると思います、
・抵抗運動(ex:キッキング)では、徒手抵抗に対して、下肢の力が働くため、股関節には剪断力がかかります。
負荷量としては、膝をたてる、SLR、抵抗運動の順です。
このように、力学を用いながら、対象部位(転移部)の負荷を考慮しながら運動療法を進めます。
運動器疾患でも、狙った場所に、どのくらいの負荷がかかっているか考えてリハビリを行いますよね???がん(骨転移)でも全く一緒です。
いかがでしたか?運動時の力学的な視点などは骨折のリハビリでも応用できると思います。運動器疾患に限らなくても、運動療法を行うときには、必須の項目かと思います。
疼痛についてもOPQRSTを用いて、さまざまな人を評価することができます。
ぜひ、活用していただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考
がんの理学療法 研修会